2017年05月31日

〈40〉磁石と滋賀県

電磁気力学の窓
GHS体系物理の授業は、力学・熱力学を終えて、6月から電磁気力学へと進む。
1学期の間に、高校物理のすべてを体系的に再履修するカリキュラムである。
他の予備校のように(?)高校時代の履修を前提とした演習授業はしない。
土台のないところに種を蒔いてもろくな収穫しか得られないからである。

さらにGHS長野校では、個別指導をしているので、高校3年生にそんな授業を行っている。
ある高3生(一応東大志望)は、波動(力)学も終えているので、電磁気力学があと二回程度でおわり、
一応、高校物理の体系的履修が修了する。実に、羨ましくもある高校生活である。
そんなGHS体系物理のテキスト(HPで公開中)には、イントロ部分に、
磁気とは何かの流れで「磁石」の話が出てくる。
もっとも、静磁気そのものは入試ではほとんどでないので資料的な扱いとなる。

さてさて、なんとも長い前置きだったが、ここからが漢字の話である。
素朴な疑問、“ 磁石の「磁」って、滋賀県の「滋」と似てるね? どうして?” という話。

磁石の「じ」
実は、磁石の「磁」は、同じつくりの、慈悲の「慈」につながる、という説がある。
昔々、中国に「慈県」(ツィーシェン)という鉄鉱石、磁鉄鉱の産地があったそうな。
なんでも、その石は、他の石を引きつける不思議な力がある。それはまるで、
仏が慈悲でもって、人を引きつけ、あるいは母が子を慈しむようだということで、
磁石(ツーシー císhí.)と呼ばれたと。すでに中国に慈県は存在せず、この説に確たるものはないが、
漢字の話としてはマル適である。

ちなみに、マグネットのもととなったいわれるギリシアのマグニシアの地名は今も実在する。
曰く、

磁石を意味する英語の「マグネット」(magnet)は、
 Magnesia.jpgギリシャ語で「マグネシアの石」を意味する
 「マグニティス・リトス」(μαγνήτης λίθος)
 に由来するという説がある。
 この地域では鉄鉱や磁鉄鉱だけでなく、
 マグネシウムやマンガンが産出されることが、
 古くから錬金術師達に知られていた。
 [https://ja.wikipedia.org/wiki/マグニシア県]


磁石、洋の東西を問わず、というところか。

滋賀と茲
 そこで滋賀県の「滋」であるが、これは例によって、表音文字である。
滋賀の由来については、諸説あるが、元々は帰化人の「志賀」一族の住んだ地である。
志賀直哉、志賀潔、そして長野の志賀高原も、この一族とつながりがある。
古代よりこの一族とそれにかかわる地名等は、「志賀」「志我」をはじめとして、
「之加」「之賀」「思賀」「思香」「思我」「四可」「四賀」「然」などと
表音表記されてきた歴史がある。
そして、明治廃藩置県のときに、「滋賀」という漢字を当てた。
では、「滋」とは?
そのつくりの旧字体がである。
「シー」という表音文字で、此、是、斯と同系音として、
指示代名詞に転用され、「これ」と訓読し、また、指示副詞として「ここ」と読む。
    「茲に」=ここに=hereby
この代名詞用法はかつて、センター試験にも東大理系の漢文にも登場したことがある。
『漢文解析』の読者は、代名詞の項に追加しておいてもらいたい一字である。
posted by Kyuzen Ichikawa at 16:38| 漢字の由来と派生