2019年02月06日

〈50〉今年のセンター試験

出典は『杜詩詳註』仇兆鰲??
 そもそも著者名が読めませんな……
単純に音読みすると「キュウチョウゴウ」だと。
でも「仇」って、恨みとか敵(カタキ)でしょう?
なんだかサスペンス作家のペンネームみたいですね。
1638生〜1717没ですから明朝末から清にかけての人物で、
漢文としては比較的新しい方と言えます。
杜甫は李白と並び、唐を代表する詩人にして
中国文学史上の最高峰とされるのは言うまでもないですが、
杜甫(712-770)からすれば、実に千年後に成立した注釈書ということになります。
仇兆鰲はこの書の完成に半生を捧げ、1693年に成立し、明の康熙帝に献呈されています。
杜甫の詩の研究の世界では、避けて通れないほどの有名かつ基本的な文献で、
唐の後の中国統一王朝である宋代から連綿として続いてきた
数多の先人達の杜甫の詩の研究書・注釈書を集大成したとされます。

その中に、杜甫自身が書いたこういう私的な文章があるというわけです。
リード文に曰く、
「唐代の詩人杜甫が、叔母の死を悼んだ文章である。
 杜甫は幼少期に、この叔母に育ててもらっていた。」
これで文章の輪郭はつかめますから、実に親切なつくりです。

2014の反省か?
センター試験の2014年の漢文は、中国湖南では筍を食べるという話から
老荘思想へと展開するなかなかの「難問」でした。
なぜ「難問」なのかというと、本年のような丁寧な注が無く、
筆者の境遇を含めその歴史的・文化的背景がわからないと文意が
とてもわかりにくいものが少なからずあったからです。

入試センターは設問別の平均点までは公表していないので、
漢文の得点推移はわかりませんが、
当時のGHS生の結果から見ても「難問」であったため、
事後の「反省」がなされたことは想像に難くありません。

「漢文研究者にとっての常識は、受験生にとっての非常識」なのですが、
そこに思い至らないで、いくつかの前提知識を必要とする2014年の問題は、
かえって、その溝を埋めるために何が必要か?を顕在化させるための
漢文解析授業の格好の(?)素材となっています。

「平易」って?
センター試験の後は、大手予備校による解説や分析がつきものですが、
K塾,T進,Bッセなどの評価を見ると漢文は「平易」・「易化」〜「標準」となっています。
確かに、GHS生の設問別の得点を見てみると、平均は40点を越えているようで、
漢文解析の講義を一年間やってきた甲斐もあろうというものです。
何が「平易」なのかというと、
 1.注が多くて(昨年同様)、受験生が引っ掛かりそうなところはほとんどすべてにある。
 2.設問の各選択肢のダメなものが比較的はっきりしており、迷うような選択肢がない
ということになるでしょう。文系も理系も共通に受けるのだから、それで十分だと思います。

背景として儒教徳目である「義」を示す美談と故事とがメインですから、
それ相当の漢文的世界への慣れがある方が有利ではあるでしょうが
現和人でも読解可能な範囲の話ではあります。

設問としてもっとも失点しやすかったのは、問1(イ)乃の意味で、
これは落ち着いて文脈を辿れば何ともありませんが、
=「すなはち」という訓読をうすら覚えしているレベルでは引っ掛かるのです。
もちろん、『漢文解析』には書いてありますから大丈夫でしたね??

そういう意味で、古文は「平易」か?
ちなみに、古文の方は、「姫に恋した狐」の話で、
人間に化けて近づこうとするが・・・という、
まるで「マンガ日本昔話」に出てくるようなおとぎ話。
「人魚姫」ならぬ「狐王子」という内容レベルは小学生向け。
その意味では「平易」ですが、
そのどうでもよかろうと思えるストーリーを真面目に追っかけないと
正解は選べないという点が、かえって難しさをはらんでいます。

したがって、漢文と違って、古文はストーリーにはまった高得点の人と、
童心に帰れずストーリーを読み損ねた(ノ_<。)低得点者の二層に分かれました。

昨年度の、宣長の歌論が内容的にも秀逸で、設問もよく出来ていたのに比すると、
「こんなのもっと注を入れてやって、高校入試でよくね?」
と苦言を呈したいところです。
大学受験生に読ませるものとして、漢文の内容と比してもどうかな、と。

漢文は儒教道徳に彩られているにしても、人間の精神についての善き話であり、
時代や文化は違っても、まあ読むに値するとは思いますが、
んー狐王子じゃなぁ〜・・・ ʅ(◞‿◟)ʃフゥ---

posted by Kyuzen Ichikawa at 13:00| センター入試