2017年12月26日

〈44〉先生、小児、ネズミ

 まずは、最近はやりの脳トレ風に。

Q.「先生」、「小児」、「ネズミ」に共通する文字を答えなさい。

        もちろん、漢文絡みの問題として考えてください。
       ・・・・
ノーヒントでわかったら漢文マスターでしょう。

第一ヒントです。
        走るネズミイラスト.jpg
 ネズミは何のために走っているのでしょう。(しかも二本足ですな)
ここでわかった人は漢文力+教養、素晴らしいです。

では、第二ヒントです。
                  小野妹子.jpg

この人は、中学の歴史教科書にでてくる有名人です。
もう、わかりましたか?

そう、答えは、

      「子」
です。
「先生」のことは漢文では子(シ)ですから、
センター試験で、子供のことだと間違えると大変なことになるぞ〜!!
と注意喚起するのが恒例です。孔子、孟子、老子・・・。
だから、代名詞you=「子」で使うときも尊称です。
これが日本にも伝わると聖徳太子や小野妹子となるのです。
昔は◯子とついても、女の子とは間違われなかったのです。

それが、いつのまにやら、女性の名前に入れかわってしまいました。
ちなみに、私の姉の名前は「泰子(やすこ)」です。
もっとも、子供の意味では男女を問いませんね。
さらに不思議なことに、ご存知十二支のネズミは「子」ですね。

これってどういうこと?どこが共通?どうつながる?それが今回のテーマです。

そもそも「子」の漢字の成り立ちについては、諸説あるようです。
単純な字だけにいろいろと解釈できるのでしょう。
ふつうには「頭が大きい乳児を形どったもの」というもの。手を広げ、
乳児だから二本足で立ってないから・・・と。なるほど〜と思いますが、
これでは、子供の意味の説明にとして、現和人に納得せしめるには十分ですが、
先生とネズミはどうなんだい?というギモンに答えられません。きっと、
小野妹子もムッとすることでしょう。そこで・・・
我が愛用の『漢字海』(三省堂)によれば、
「十一月にあたる。陽気が兆し、万物が茂り始める。
 したがって、人の生まれ始めをいう」
中国古代の文献にある解釈だそうです。
これは、陰暦の十一月ですから、今の11月末〜1月上旬あたりになるそうです。
確かに、新年の兆しがあるがまだ出てはこない、そんな生命サイクルのスタート時です。

したがって、干支・子=ネズミではありません。
「第1着〜 ネズミさん」という意味です。1.ネズミ 2. 牛 3.虎
ということであり、子,丑,寅・・・は動物名ではなく漢数字なのです。

「あん、だったら何かい? フーテンの寅さんってぇのは、トラじゃねえのかい?」
「ありゃどう見ても虎にゃ見えやしねぇ、じゃあ寅は三男坊だったかい?」
いえいえ・・・まあ、私が理解する限りは彼は長男。仕事は自由業、テキ屋さんですから、
つまり「第三次産業に従事する方」=「寅さん」という、後付け解釈でいかかでしょうか。

さてさて、物事の始まりとすると、先に生まれた人、さらには元祖・教祖とは「第一」
ということ、ここから道がはじまるのですから、敬意をこめて「孔子」と呼んだのでしょうね。
しかも、師=子=シです。会話上では「孔子」でも「孔師」でも区別はつきませんね。
文章にしてはじめて子になるのですが、表意文字としても表音文字としても
「師」に通じるのですから、妹子さんのように身分の高い人に「子」をつけることは
古代日本においては誉れ高きことだったわけです。

もちろん、「〜から生まれたもの、子供、小さきもの、可愛いもの」
という意味としては様々あり、
電子、原子、遺伝子、因子、粒子、精子、卵子、種子、胞子から
枕草子、冊子、子音、扇子、帽子、菓子、豆子郎、硝子
寺子屋、店子、案山子、金子(キンス)、子分、
天子、皇太子、王子、小公子
桃子、マツコ・・・
のように広く使われるようになりました。

追記) 昔、歌手の欧陽菲菲が日本に来たばかりのとき、テレビにでて
       (台湾出身・代表曲「雨の御堂筋」・「ラヴ・イズ・ オーヴァー」など)
「オザキキヨヒコ」はコがついているから女性かと思って、
実際あったら男でビックリした、という話を語っていたのを思い出しました。
ちなみに、歌手・尾崎紀世彦の代表曲は「また逢う日まで」です。

posted by Kyuzen Ichikawa at 12:33| 漢字の由来と派生

2017年11月21日

〈43〉どんな虫が好き?

虫=insects !?
どんな虫が好き?と小学生たちにたずねれば、
「カブトムシ」とか「チョウチョ」や、
「ゲンジボタル」(おじゃる丸のおかげで)などが挙がるだろうか。
♫オケラだってミミズだって、アメンボだって・・・みんなみんな
生きているんだ、虫たちなんだ・・・ってなことを言いたいのではない。

ここでもし「は虫類」という答えが返ってきたとしよう。
カメやトカゲなんかが好きというのもありだろう。
すると現和人は、「それは虫ではないよ」と教えてやることだろう。

では、なぜ「爬虫類」には「虫」の字が含まれているの?
・・・と切り返されても困らないためのお話 (⌒-⌒; )

爬虫類ってどんな虫?
爬虫類の「爬」は、動物が這うように歩くの象形であるという。
ワニもカメもトカゲも、腕立て伏せしながら移動する。
もちろん、でかいトカゲである◯◯サウルス(大トカゲの意とか)たる
恐竜もこの仲間である。恐竜が虫 !!!???? とはこれ如何に。

現和人は、西洋科学的な、進化論に沿った生物学的系統樹による
生物分類に慣らされているから、爬虫類が「虫」にみえない。

センター試験、2010年本試出題に「老虫」という話がある。
筆者の出身地では虎のことを「老虫」というのだが、
別の地で、ネズミというのを知らず、「老虫」がいる!!
と言われてビックリした〜というエピソードである。

共に哺乳類であるから、爬虫類との共通点を探れば、
「虫」とは漢文世界においては、動物一般を指すことがわかるだろう。
つまり、生き物(animalというとやはりちょっとズレる)
だから、虫=insectではない。insectは「昆虫」という生き物である。

そこで漢文的カルト・クイズと行こう。

古中華人は、一説には、生き物の分類を
昆虫、羽虫、毛虫、甲虫、鱗虫、裸虫と呼び分けたとのこと。
では、それぞれどんな動物達でしょう?
まあ、このうちまともに現和人が認識できるのはおそらく昆虫だけだろうか。
たとえば、甲虫ってカブトムシでしょ?と思いたいところだが、
残念!! これは「亀」である。
羽虫はもちろんシロアリなどではなく・・・・・・

そう、もちろん「鳥」である。
現象論的分類だから、「甲羅」や「羽」をイメージするとよい。
では、この調子で……
毛虫=[             ] もちろん、worm類ではなく・・・
鱗虫=[             ] これはわかりやすいか・・・
裸虫=[             ] さてさて?? 


このうち「老虫」は、毛虫に分類される。哺乳類で
体毛に覆われいればよいから、ネズミだって獣のトラも
毛虫の仲間となるわけだ  ( T_T)\(^-^ )
現和人にとっては、げっ歯類とネコ科の動物として明らかに別物ではあるが、
漢文を理解する(いや、歴史的事象を理解するというべきか)には、
その時代の人々の目線と尺度、価値観と世界観を共有する必要がある。

漢文学習というのは、現和人がもつ価値観を相対化する機会であり、
別の世界ながら、我々に流れ込んで融和している漢文的視点を捉え返す窓口である、
・・・・・・なぜ、漢文を学ぶべきなのか?文法的に漢文解析をするその先には、
そんな世界が広がっていること、授業を通して伝えたいのは此の事である。


答: 鱗虫=[ 魚類 ].裸虫=[ 人間 ]  
posted by Kyuzen Ichikawa at 16:31| 漢字の由来と派生

2017年09月30日

〈42〉 患っていても走れるか?

「疾走」とは速く走ることだが・・・
 疾走という漢字は、英語ではsprintとかdashにあたるそうだ。
つまり、全力で走ること。そこで気になりません?
「疾」は 'やまいだれ()' がついている。
つまりは疾病、疾患の疾である。病んでいるように走る??
患っているのに走る? なんでそれで速く走れるのか???
そんな素朴な疑問を抱いたことはないだろうか?

たしかに、「疾」の中には「矢」が入っている。
古代においては、最速のものの代表格だ。
曰く、「光陰,矢の如し」 
月日はあっという間に過ぎ去ってしまうもの・・・
中学の校長先生が朝礼でよく言ってたな。

だったら「矢走」でいいじゃないの?と思ったりする。
何故に全力ダッシュに疒が付いてくるのか。

『傷寒論』という古典・・・
漢方の古典に『傷寒論』というのがある。
後漢末期から三国時代に張仲景が編纂したとされる中国医学書である。
この「傷寒」とは、主に急性熱性症、たとえば、腸チフスなど高熱をともなう
伝染性・感染性の急性疾患の原因と治療を説く。
これに対して、慢性病のことを「雑病」と呼んだりする。
雑病については金匱要略(きんきようりゃく)』として伝わっている。
このように、古代から、急性病と慢性病の区別はなされていたわけであり、
すでにお気づきのことと思うが、前者が「疾」、後者が「病」にあたる。
あっという間に発症し、(「邪気が人に中(あた)る」)
場合によってはコロリと逝ってしまうのが「疾」。
そういうわけで、「矢」に疒」が付くのである。

それが重篤になれば「病む」という使い分けがあった。
「疾病」という言葉は、すべての病気を合わせた言い方なのである。
もちろん、病んでいてはさすがに速くは走れないから
「病走」という言い方はないようである。

posted by Kyuzen Ichikawa at 07:29| 漢字の由来と派生